我々の暮らしは、常に様々な要素に囲まれている。例えば、寝室をとっても、部屋を構成する壁や床、柱、窓といった建築的要素もあれば、家具やカーテンのようなオブジェクト的要素、さらにそれらを粒子化していくと木や金属、石材といったマテリアル的要素、光や風などの現象的要素など、数えきれない要素が同時に存在している。それらの要素は、偶然に集合するわけではなく、我々の趣味嗜好や思想、機能など様々な価値基準や要因によって取捨選択され、必然的に集合する。まさに我々の暮らしとはeclecticそのものである。
では、家具を購入する時、すなわち自分の家や部屋に家具という新しい要素を迎える時、我々はどのようなことを考えるだろうか。きっと、そこに広がるeclecticな風景を思い浮かべるに違いない。
”このテーブルはあの窓際に置きたい”
”この椅子はあのテーブルに合いそう”
”このソファはあの壁の色合いや質感に合いそう” ,etc.
そこで最初に、家具屋として単なる家具の展示場ではなく、無垢の家具が多様な要素と共存しながら、そこから暮らしを想像できるようにするにはどのようにすれば良いかを考えた。
建築的要素として、存在感があった既存の柱梁やガラスブロック、一定のリズムで連続する細窓、新たに設置した厚みのある1枚の壁とその開口。マテリアル的要素として、塗装、モルタル、溶融亜鉛メッキ、銅、真鍮、オーク(床)、ガラス、ファブリック。オブジェクト的要素として、カウンター、手かけ、照明、カーテン。そして、職人の生み出す無垢の家具。
多様な要素は誰かのどこかの暮らしに想像で繋がる。そんな、eclecticでおおらかな建築を目指した。